眠れない夜は永い

もうこれで最後だと思った瞬間を綴っていきます

少女は3

部活の大会の朝、体調が悪く、

やむなく欠場した。

無視をされ始めたのはその日からだった。

だから、少女も無視をした。

自分自身を。

だれも少女を見てくれる人はいなかった。

学校に行かなければ咎められるのに、

学校に行っても、誰も褒めてはくれなかった。

 

母の卵焼きに蟻蛾がついていたので、

弁当箱ごと、捨てた。

ゴミ箱の蓋によって、

存在が意図的に消された弁当箱は、

まるで自分のようで。

少女はそんなことを、

悟るために捨てたのではないと、悔いた。


少女は飛んだ。

飛んだ時はとても、気持ちが良かった。

それまでの耐久時間が嘘のようだった。


ゴールが見えない持久走ほど辛いものはなかった。

だから、少女は自分でゴールテープを貼ったのだった。


一帯が生臭いにおいで包まれて、

そこだけ時間が止まったようだった。

少女によって止められたようだった。


大人たちは舌打ちをした。

電車が止まったから。

慰謝料が発生するから。

保護者宛の文面を考えなければならないから。


少女だけが、綺麗だった。

だが、少女はもう少女ではなく、なった。