部活の大会の朝、体調が悪く、
やむなく欠場した。
無視をされ始めたのはその日からだった。
だから、少女も無視をした。
自分自身を。
だれも少女を見てくれる人はいなかった。
学校に行かなければ咎められるのに、
学校に行っても、誰も褒めてはくれなかった。
母の卵焼きに蟻蛾がついていたので、
弁当箱ごと、捨てた。
ゴミ箱の蓋によって、
存在が意図的に消された弁当箱は、
まるで自分のようで。
少女はそんなことを、
悟るために捨てたのではないと、悔いた。
少女は飛んだ。
飛んだ時はとても、気持ちが良かった。
それまでの耐久時間が嘘のようだった。
ゴールが見えない持久走ほど辛いものはなかった。
だから、少女は自分でゴールテープを貼ったのだった。
一帯が生臭いにおいで包まれて、
そこだけ時間が止まったようだった。
少女によって止められたようだった。
大人たちは舌打ちをした。
電車が止まったから。
慰謝料が発生するから。
保護者宛の文面を考えなければならないから。
少女だけが、綺麗だった。
だが、少女はもう少女ではなく、なった。